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統合失調症ABC

統合失調症ABC

精神科・神経内科・もの忘れ外来 分野病院

どのような病気ですか?

統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、その原因は脳の機能にあると考えられています。
約100人に1人がかかるといわれており、決して特殊な病気ではありません。
思春期から40才くらいまでに発病しやすい病気です。
薬や精神科リハビリテーションなどの治療によって回復することができます。

発症の要因は?

統合失調症の原因はまだはっきりとわかっていませんが、脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスがくずれることが関係しているのではないかといわれています。また、大きなストレスがかかることなども関係あるようです。 遺伝子も関与しているといわれていますが、単純に遺伝子だけの問題ではなく、さまざまな要因が関与していると考えられています。

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どのような症状ですか?

統合失調症の症状は大きく「陽性症状」と「陰性症状」の2つにわけることができます。

陽性症状
妄想

明らかに間違った考えや受け入れられない状況について、強い確信をもってしまうこと。

・「テレビやラジオで自分のことが話題になっている」
・「誰かにずっと監視されている」
・「自分の考えが外に漏れている」など

幻覚

実際に起こっていないことを現実的な感覚として知覚してしまうこと。
「幻聴」・・・まわりに話している人がいないのに誰かの声が聞こえてくる。
※ その他に、実際に存在しないものが見える(幻視)/臭う(幻臭)

思考障害

思考が混乱してしまい、考え方に一貫性がなくなってしまうこと。会話に脈絡がない。ひどい場合は何を話しているのかわからなくなることも。

陰性症状
感情の平板化(感情鈍麻)

喜怒哀楽の表現が乏しくなるだけでなく、他者の感情表現に共感すすることも少なくなってしまうこと。

思考の貧困

会話をしていても比喩などの抽象的な言い回しが使えなかったり、理解できなかったりする。

意欲の欠如

自発的に何かを行おうとする意欲がなくなってしまうこと。また、いったん始めた行動を続けていくことができなくなる。

自閉(社会的引きこもり)

自分の世界に閉じこもり、他者とのコミュニケーションを取らなくなること。

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病気の経過と症状は?

統合失調症は病気の経過により、前兆期・急性期・休息期(消耗期)・回復期にわけられます。それぞれの病期で特徴的な症状が認められます。

※ 不安・孤立・過労・不眠などによるストレスの蓄積は症状の悪化や再発につながる恐れがあるので注意しましょう。

前兆期

とくに目立った症状はありませんが、何となく変だと感じるようになります。
眠れなかったり、イライラしたり、集中力が低下するなどの症状が続きます。

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急性期

幻覚や妄想など不思議な体験をしますので、自分の中で何かが変だと感じながらも、自分が病気だとは思えず、他人から見ておかしな行動をすることがあります。また、周りの出来事に敏感になり、不安や緊張を強く感じたりします。

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消耗期(休息期)

幻覚や妄想などの目立った症状は少なくなりますが、元気がなくなったり、やる気が起こらなくなったりします。
これは、急性期に心と体のエネルギーをたくさん使ってしまったことが原因と考えられていますので、薬を飲み続けながら、ゆっくりと十分に休むことが必要です。

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回復期

少しずつ元気が出てきて心も体も安定してきますので、あせらず、ゆっくりと生活の範囲を広げていきましょう。
また、再発予防のために薬を忘れずに飲むことが大切です。

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治療はどのように行われますか?

統合失調症の代表的な治療として、薬による治療と精神科リハビリテーションがあります。 急性期には薬による治療が基本になりますが、急性期・休息期を脱し回復期に入ると、薬と精神科リハビリテーションを組み合わせることが効果的と言われています。

統合失調症は一日も早く治療を開始したほうが病期の回復が早く、症状も軽くてすみます。まずは専門医に相談しましょう。
薬物療法について

統合失調症の治療の中心となる薬を抗精神病薬といいます。幻覚や妄想、考えをうまくまとめることができない、気持ちをうまく表現できず意欲がわいてこない等の症状を改善するだけでなく、再発の予防に大きな力を発揮します。 その他にも、症状に合わせて、不安や抑うつを和らげる薬、睡眠薬などが使われます。また、抗精神病薬の副作用を抑えるために薬が処方される場合もあります。

症状を調整する薬 副作用止め
抗精神病薬
抗不安薬
抗うつ薬
睡眠薬(睡眠誘導剤)
抗パーキンソン病薬
便秘薬(緩下剤)
薬による治療にあわせて、十分に休養をとることも大切です。家族をはじめ、周囲の人たちが協力して治療に専念できる環境をつくりましょう。
抗精神病薬の働き

抗精神病薬は、統合失調症患者さんの脳内で過剰に活動しているドーパミン神経の活動を抑えることで、症状を改善すると考えられています。
抗精神病薬は、従来型(定型)抗精神病薬と新規(非定型)抗精神病薬とに分けられます。従来型抗精神病薬は、陽性症状に効果があり、新規抗精神病薬は、陽性症状に加えて陰性症状に対する効果もあるといわれています。

副作用かな?と思ったら

時として体がかたくなったように感じたり、手足が震えたり、落ち着きがなくなる人も中にはいます。また、のどが渇いたり、便秘になったりする人もいます。
これらは薬の副作用の場合がありますので、少しでもおかしいなと感じたら医師に相談しましょう。薬の量を調整したり、組み合わせや種類を変えることで、副作用をおさえることが可能です。

服薬をやめてもいいですか?

薬を飲むことをやめると、また症状が出てくることがあります。
また、再発を繰り返すと症状が強くなり、治りにくくなります。
薬には再発を予防する作用があり、薬を飲みつづけることは重要です。
薬を飲むことをやめる、薬の量を減らすなどについては、医師とよく相談して決めましょう。症状が良くなったからといって、勝手に自分で薬をやめてはいけません。

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精神科リハビリテーションとは?

精神科リハビリテーションとは、スムーズに安定した生活を送れるように手助けをするものです。人の集まるところで感じるストレスに上手く反応できる力を身につけたり、仕事に生かせる技術や人との接し方などを学んだりすることができます。
社会生活感覚を取り戻すための、さまざまな社会復帰プログラムや支援施設があります。医師やPSW(精神保健福祉士)、作業療法士と相談して、自分に合った無理のないリハビリテーション・スケジュールを計画しましょう。

デイケアとは

グループ活動を通じて社会にうまく参加できるように準備するところです。レクリエーション、軽作業、料理などのプログラムがあり、症状はよくなったけれども社会に出る自信がない、友達が欲しいなどの悩みがある場合は、デイケアに参加するとよいでしょう。定期的に通うことで規則正しい生活リズムも身につきます。医療機関で行われているデイケアは外来治療の1つとして健康保険が使えます。

リハビリした人の約30年後の状態

・過去1年に入院していない ・・・・・・・・・・ 82%
・週1、2回は友人と会っている ・・・・・・・・・・ 61%
・1人以上親友といえる人がいる ・・・・・・・・・・ 68%
・過去1年間働いた経験がある ・・・・・・・・・・ 40%
・ほとんど症状が消失している ・・・・・・・・・・ 68%
・基本的なニーズを満たすことができる ・・・・・・・・・・ 81%
・充実した生活を送っている ・・・・・・・・・・ 73%

※引用文献 : 統合失調症ABC
(監修:国際医療福祉大学 教授 上島国利 )
(すまいるナビゲーターブックレートシリーズNo.1 大塚製薬株式会社)

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回復を促す“家族の接し方”

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